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問題73

問題73 日本語に生じる副次調音はどれか。
a 母音の声門化
b 母音の軟口蓋化
c 母音の無声化
d 子音の円唇化
e 子音の咽頭化
1 a, b 2 a, e 3 b, c 4 c, d 5 d, e

解答例:4

副次調音(二次的調音)について復習しましょう。『日本語音声学入門』の2.2.4.2(pp. 63-65)を参照してください。副次調音という用語は研究者によって少し違った意味で使われるので注意しましょう。

声道に2か所で同時に狭窄をつくる調音で、2種類の狭窄の程度が異なる場合、程度がほうを指して副次調音というのが普通です。このように定義された副次調音には、

・「唇音化」(円唇化)
・「硬口蓋化」
・「軟口蓋化」
・「咽頭化」
の4つが含まれます。

ただし、人によってはこれらに、

・「帯気音化」
・「有声化・無声化」
・「喉頭化」

も含める場合があります。上の定義からは少し外れますが、この広義の副次調音を念頭においてお話をいたしましょう。

aの「母音の声門化」というのはあまり聞かない用語です。おそらく母音調音の際に声門を閉鎖させることを指しているのだと思います。日本語(共通語)では、語頭の母音は声門閉鎖をともなって調音されることが多いといわれています。ただし、声門閉鎖の有無が語の意味の区別をすることはありません(弁別機能を持ちません)。弁別機能はありませんが、日本語に存在する現象であるのは確かです。問題は、声門閉鎖をともなうことを普通は副次調音とは呼ばないことですね。まずもって×ですが一応キープしておきましょう。

bの軟口蓋化とは、子音の調音の際に前舌面が軟口蓋に盛り上がることです。日本語の子音で軟口蓋化が問題とされることは普通ありません。さて、選択肢の「母音の軟口蓋化」ですが、母音の軟口蓋化というのは、僕は聞いたことがありません。何のことでしょうね。これは×としておきましょう。

cの母音の無声化は広義の副次調音ということになりますね。日本語の母音は無声化することが知られています(『日本語音声学入門』の4.3(95-96ページ)参照)。共通語では、無声子音に挟まれた狭母音(高母音)は規則的に無声化します(ただし、無声化の有無も弁別機能を持ちません)。日本語に生じる(広義の)副次調音ということになりますので、これは○です。

dの子音の円唇化(唇音化)ですが、これは子音の調音の際に同時に唇の丸めがともなわれることです。日本語では後続母音との同化(逆行同化)で軽い円唇化が生じます。具体的には円唇母音[オ]の前の子音が円唇化を生じます。[ウ]を円唇母音で調音する話者においては、[ウ]の前の子音も円唇化します。現代の日本語では円唇化は、このような同化現象にのみ観察されるもので、円唇化の有無は弁別機能を持ちません。(現代の一部の方言と昔の日本語では弁別機能を持ちますが。)ということで、円唇化は日本語に観察される現象ですので○となります。

eの子音の咽頭化は、子音の調音の際に咽頭に(舌根と咽頭壁の間に)狭めができることです。アラビア語の咽頭化が有名です。日本語には現れません。したがって×です。

ということで、確実に○なのがcの「母音の無声化」とdの「子音の円唇化」ということになりますが、選択肢を見てみると、4 c, dというのがありますので、正解は4ということになります。
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